歯科裁判事例【14】

Case14.
補綴主導型のインプラント治療を行うべき注意義務

【事件番号】

東京地裁令和4年8月10日判決
令和2年(ワ)第17031号 
損害賠償請求事件

【事案の概要】

本件は、4本のインプラント体を埋入する治療を受けた患者が、歯科医院に対して、補綴主導型のインプラント治療を行うべき注意義務があるにもかかわらず、外科主導型のインプラント治療を行った結果、インプラント体が不適切な位置に埋入されたなどとして、損害賠償の支払を求めた事案です。

【争点】

  1. 補綴主導型のインプラント治療を実施すべき注意義務違反の有無
  2. 外科主導型のデメリット及び補綴主導型の選択肢があることに関する説明義務違反

【判旨】

請求棄却(請求金額 430万3383円)

裁判所は、口腔インプラント治療指針等の文献から、手術当時に補綴主導型のインプラント治療が相当程度広く普及しており、少なくとも標準的な治療方法の一つとして定着していたことがうかがわれると判示する一方で、それらの文献に診断用ワックスアップ、診断用ガイドプレート、外科用ガイドプレートがインプラント治療に不可欠であるとは記載されていないこと、口腔インプラント治療指針2012に「ここに掲げたのは、本学会が今日一般的となっていると認めた方法・技術であるが、それ以外の方法を否定するものではない」と記載されていること、平成30年3月に発行された「口腔インプラント学術用語集」には外科主導型治療の概念が紹介されているが、当該手法が不適切である旨の記載がないことの各事情に照らし、手術当時、補綴主導型の手法のみが医療水準であったとか、外科主導型の手法が直ちに医療水準に反するものであったとまでは認められないと判示して医療過誤の主張を排斥しました。

また、裁判所は、患者が補綴主導型の手法を用いる大学病院と外科主導型の手法を用いる被告歯科医院のいずれでインプラント治療を受けるかについて、それぞれの病院で受けることのできる治療方法の内容、利害得失、予後等を比較検討し、熟慮の上で決断したものと認められるとして、外科主導型のデメリット及び補綴主導型の選択肢があることに関する説明義務違反は認められないと判示しました。

本件のポイント

この判決が示唆しているように、ある治療方法が標準的な治療方法として定着していたとしても、必ずしも他の治療方法が医療水準に反するものであることにはなりません。一般的でない治療であるからといって、直ちに前医の判断ミスであると判断することは危険であるといえます。

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